花の郷では多様な障がいを持った方を受け入れ、ご利用者のご要望に沿った日常生活を営んでいただく ために、施設内での支援体制や医療的ケアサービスを充実させております。
 重度の障がいを持った方を受け入れた場合、医療的ケアとして以下の支援が必要になります。

  1. 胃ろうのご利用者への食事の提供と排便のコントロール
  2. 口腔内等からの喀痰吸引
  3. カニューレを挿入していない(カニューレ・フリー)ご利用者の喀痰吸引
  4. 医療的ケア業務従事者への定期的研修

胃ろうのご利用者への食事の提供と排便のコントロール

 ご利用者にとっての「食」は栄養摂取だけではありません。食事は人間らしく生活する上での基本的行為であり「食べ たいものを(管で)食べる」権利があると私たちは考えます。

 そのため、何が食べたいのか、どんな味やにおいが好きなのかを、ご本人や保護者の方にお聞きし、ご希望に沿うべく、 主治医や指導医に相談しながら、流動食を調理し提供しています。

 胃ろうの方に食品を注入した場合、腸の活動を活発にして排便を促すような身体活動をさせる支援が必要になります。 また、口中の清掃などのケアも必要になります。

 食事の提供に伴って生じる追加的な支援は、看護職員、支援職員一丸となって、勉強しながら実施しています。

再調理技術の講習
衛生面の確認
お寿司を再調理
カレーを再調理

口腔内等からの喀痰吸引

 花の郷には重度の障がいがある方が通所しておられます。中には唾液を上手に飲みこむことができず、痰もうまく排出できない方がおられますので、口から吸引をして唾液や痰を取り除く「喀痰吸引行為」を施設では行っています。

 花の郷では「自分の事を理解していて傍で寄り添う職員に吸引をしてほしい」というご利用者の要望にお応えし、 日常支援する職員が第3号研修を履修し認定を得て吸引行為を行っています。

 花の郷で行っている吸引の種類と実施者を下表にまとめて示します。

吸引部位 実施者 備考
口腔内 看護師
認定特定行為従事者
認定特定行為従事者:
第3号研修を履修し、認定された支援職員
鼻腔内
気管カニューレ内
その他
カニューレ・フリー
看護師
特例実施者
特例実施者:
法人の規定に基づき指定された支援職員

 気管カニューレやカニューレ・フリーを職員が理解しやすくすることや、吸引訓練の目的で模型を作成しています。実際に見て触れながら気管カニューレ内吸引の訓練を行っています。

気管カニューレ模型
カニューレ・フリー模型
吸引訓練

 常時吸引を必要とするご利用者は各々吸引備品を持参します。ご利用者のかかりつけ病院により、使用後の吸引カテーテルの洗浄・消毒・保管等の取り扱いが決められています。そのため、吸引をする職員が吸引カテーテルを取り違えたりしないよう、容器に「吸引タグ」を取りつけて識別しています。

気管吸引用カテーテル保管と洗浄タグ
口鼻腔吸引用カテーテル保管と洗浄タグ

カニューレを挿入していない(カニューレ・フリー)ご利用者の喀痰吸引

 平成24年4月に施行された喀痰吸引制度に関連し厚労省のQ&Aでは、「介護職員が行うカニューレ・ フリーの気管内吸引行為が許容されるか否かは、行為の態様、患者の状態等を勘案して個別具体的に判断されるべきである」 となっています。

 花の郷では、カニューレ・フリーのご利用者の喀痰吸引は、平成 年から看護師が行ってきました。しかし、災害時や 送迎中等の緊急時には看護師が対応できない場合が想定されますので、緊急時にカニューレ・フリーのご利用者の喀痰吸引を行うことができる「特例実施者」の制度を設け、ご利用者・ご家族、主治医・指導医の同意と指導を得て、制度を運用してきました。そして、運用が定着した結果、緊急時以外でも「特例実施者」が喀痰吸引を実施してほしいとの、ご利用者や現場の声におされ、医療的ケア委員会で検討し、運用していた要綱・規則を改訂して対応する事としました。この改訂は平成29年9月の理事会で認められました。さらに、2021年4月から法人の医療的ケア指針等が策定され、花の郷としては「特例実施者」として痰の吸引制度外の医療的ケアについて事業所の細則に基づきカニューレフリー吸引を実施しています。

「特例実施者」としてカニューレフリー吸引の認定される条件は以下の通りです。

  1. 第3号研修を履修し認定された者(認定実施者)で、1年以上日常的に吸引の実施経験がある
  2. 一定期間カニューレ・フリーご利用者の支援を経験していること
  3. 上記1,2の条件を満たし、気管内吸引に関する研修を定期的に受けていること
  4. 上記の条件を全て満たした認定実施者で、医療的ケア委員会で選定されること

 上記条件を満たした認定実施者の中から、ご本人・ご家族の了承を得て「特例実施者」として認定するためには、以下の手続きと書類を整備します。

  1. ご本人もしくはご家族からの依頼書
  2. 主治医・指導医からの指示・意見書
  3. 施設看護師による研修実績等の確認書と医療的ケア委員会での選出記録
  4. 指導医による上記1~3項の書類の確認書
  5. ご本人もしくは家族への「特例実施者」の通知と同意書

 ご本人もしくはご家族の同意を得て、認定された支援職員が「特例実施者」としてカニューレ・フリーご利用者の喀痰吸引を行います。

毎年恒例の「認定特定行為業務従事者研修」

 花の郷では毎年「認定特定行為業務従事者研修」を実施しています。

 この研修の前提として、花の郷では正規職員は全員、介護職員等喀痰吸引等の制度における「特定の者(第3号研修)」の認定を取得する、という方針があります。

 「認定特定行為業務従事者研修」は、これから認定を取得する職員や、認定を取得したあと現在は特定行為業務を実施していない職員に向けて、現場で吸引や注入を実施している職員が講師となって行われます。看護師は、この研修のサポーターを務めます。

 この研修では、基本的な手技を確認し、医療的ケアの必要性やその支援の素晴らしさを伝えています。定期的にこの研修を実施することで、花の郷全体が医療的ケアに関心を持ち続け、同一技能レベルの支援を提供するための意思統一を図ります。

てんかん発作時における座薬使用について

 当事業所には、てんかん発作の既往があり、発作を起こした際に座薬を挿肛する必要があるご利用者に対して、「特定職員」が座薬を挿肛することがあります。通常の施設生活では看護職員が常駐していますが、災害時など座薬を使用する状況で保護者や看護職員が確保できない場合を想定し、「てんかん発作時における座薬使用」に関する要綱や、マニュアルを作成し運用しています。そして、支援正規職員が毎年看護職員による研修及び試験に合格した「特定職員」として、ご利用者がてんかん発作を起こした際に指示書を確認しながら看護職員と一緒に座薬を挿肛門します。必要に応じて主治医に相談したり施設指導医に指示を頂きながら、①緊急時に命を守る事、②ご利用者の安全を保障する事を大切に取り組んでいます。

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  • てんかん発作時における座薬使用に関する書式はこちら
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